「社会課題解決型企業論」(志太勤一)

第1回「サービス企業が社会課題型企業を謳う理由」

20余年貫いた信念
 シダックスは「社会課題解決型企業(*当初は社会問題解決)」を20年以上標榜しています。昨今のSDGs、ESGという概念の普及で、現在は多くの企業、自治体の方々からのご理解を得て、社業を順調に伸ばせるようになりました。しかし、私が「社会問題解決」を謳った当時は、社会からも、社内でもほとんど相手にされない状況でした。
 営利企業、ましてや電気・ガスなどのインフラ企業や規模が大きい金融・メーカーでもない、いちサービス企業が謳う「社会課題解決」など、絵空事に見えたのだと思います。実際、多くの経済人、マスコミの方々からも「理想論・きれいごと」だと言われました。
 しかし、私はそうした声を20年以上聴きながらも「社会課題解決」の旗を降ろすことはありませんでした。シダックスは「社会課題解決型企業」の道を歩み続け、人や組織体、事業も大きく変化しました。この道を歩んできた事に誇りをもって、私はシダックスをこれからも進化させていこうと考えています。
 本連載は「社会課題解決型企業論」と題し、「理想と事業が一体となった」日本の一つのサービス企業のストーリーと、そこに働く人々の思い、努力とブレークスルー、未来への展望についてお話していきたいと思います。
 シダックスは創業から65年がたち、さまざまな事業や活動をしてきたので、シダックスという名前を知る人にも多様なイメージがあると思います。またシダックスをご存じない方にも、改めて当社がどんな“想い”を持つ人の集まりなのか、何を目指して事業に取り組んでいるのか、を知っていただく機縁になるよう本稿を書いていくつもりです。

理想を追求し「理念・事業一体の企業」が生まれた
 企業とは何でしょうか? 一般論で言えば「営利を追求する団体」です。しかし、営利を実現する“道””やり方“はいくつもあります。資本主義経済が生まれて200年、さまざまな試行錯誤の末、現在は多くの企業が「営利」を「単なる儲け」ではなく「価値提供の対価」と設定しています。つまり、社会や個人へ「何らかのプラスαの価値」を提供するので「対価=儲け」を得られる、という考えです。これは資本主義を「弱肉強食の世界」に閉じ込めるより「社会性」の方へ導きやすい考え方と言えます。
 今、そしてこれから企業が、そして私たち自身が問われるのは「提供する価値」とは何かという事です。
私はシダックスが提供する価値は「社会課題解決」であると定義し、それを企業理念としました。シダックスは65年の歴史の中で様々な事業を行ってきましたが、「社会課題解決」を追究した結果、現在の企業組織となることができたと言えるでしょう。
 シダックスは現在、学童保育や図書館・観光施設運営などの自治体サービスのアウトソーシング事業、役員車やスクールバスなどの車両の運行管理事業、保育園から学校・病院・高齢者施設、事業所などの給食事業がメインです。
業種は異なりますが、どの事業も社会課題と直結しています。
 業務としては500種を超えますがすべて「人と人の間にあるサービス」であり、日本全国で4万人近い社員がいます。事業と人を成長させ進化させるエンジンが「社会課題解決」の理念という、理念・事業一体型の企業体となりました。

サービス企業だからこそ社会課題を解決できる
 社会課題解決が人と事業をどう進化・成長させるのか? 
たとえばシダックスの祖業である「給食」において、真摯にサービスに取り組めば「食でお客様を幸福にしたい⇒健康創造が必要」となるでしょう。その実現のためシダックスは「安心・安全」を支える品質管理を研究・進化させ、一元物流システムを発明しました。これらは事業を伸ばすだけでなく給食業界全体の健全化に貢献しました。
 シダックスはさらに「お客様の本当の幸福とは何だろう?」と考えました。そして「一人ひとりの幸福のためには社会が健全でなければならない=社会課題解決」に行きついたのです。これは、車両運行においても、自治体のさまざまな仕事においても、同じコンテクストで事業を拡大・進化させています。
 車両運行管理事業では、過疎地域の交通弱者のためのデマンドバス運行で日本の先駆となっています。学童保育ではシダックス得意のコンテンツ導入で業界の在り方を一変させ、道の駅を黒字化し地域経済の活性化に貢献しています。
 社員一人ひとりがサービスに真摯に取り組めば「社会課題解決」に行きつき、社会課題解決を企業理念としているので、会社は社員の問題意識を吸い上げ、改善、改革し、事業が成長するスパイラルを生む
 「社会課題解決」の志を持ち、AIに決してできない「人と人の絆を育む」シダックスのサービスが日本中に広がることで、日本社会も健全化していく。
 私が20余年前に描いた理想の実現は道の半分くらいまでは来ているかと思います。これから、さらなる高みを目指し、シダックスは進んでいきます。