「社会課題解決型企業論」(志太勤一)

第2回「理念から事業を作る。3つのオンリーワンを目指す意義」

●シダックスは何の会社?
 シダックスは野球やカラオケによる知名度があり、フード、車両運行、自治体アウトソーシングという、一見つながりのない3つの事業を行っているので、「何をメイン事業にしている会社なのか?」「何が他の会社と違うの?」という質問を受ける事が多々あります。
 私の回答は「人と人の間に絆を育むヒューマンサービスを通して社会課題解決を目指す会社です」なのですが、これだけではなかなか理解いただけないので、具体的な説明を加えてお話ししています。
 今回は「シダックスの事業とは何か」「これからその事業をどう成長させるのか」「その先にある会社と社員の理想形」についてお話ししたいと思います。

●コア3事業の未来形
 現在のシダックスのコア3事業――フード・車両運行・自治体アウトソーシング――をメタ思考で見てみると下記の図になります。

 社員食堂や学生食堂、病院や高齢者施設、保育園などの給食事業は、社会のベースフードを作る仕事です。シダックスでは長く「マザーフード」、つまり親や子に食事を供するときの、誠実で真摯な気持ちをサービスポリシーとしてきました。この原点に立ち返れば、お客様の本当の幸福を実現するために、ベースフードにITなどを組み合わせ、お客様の総合的な「健康づくり」を追究することがシダックスの仕事だと言えるでしょう。
 車両運行は、地域交通の疲弊や物流のドライバー不足など、多くの課題があります。デマンド交通やライドシェア、自動運転など新しい技術や手法を取り入れ、社会インフラとなる「モビリティサービス」を追究します。
 自治体サービスのアウトソーシングを受託している社会サービスは、地域コミュニティづくりを担っていると言えます。地域の人づくり、産業づくりなどを通して、これからの地域社会を支えるサービスを展開していきます。
 3つのコア事業は業種は別ですが「人生を豊かに、健康にするサービス」つまり福利厚生サービスという点で共通しています。また、メタ思考で捉えると、今後さまざまな事業シナジーを生み出すことができます。3事業を結びつけるのが「社会課題解決」の理念です。この理念ゆえに事業が生まれ、高品質化し、連携し、拡大していくことができるのです。

●3つのオンリーワン戦略

この3つのコア事業を未来の日本社会の中で、どう位置付け、どんなポジションを取っていくか。それが、2024年度経営方針として社内で発表した

3つのオンリーワン
① オンリーワンの自治体サービス総合アウトソーサー
② オンリーワンのハイエンド&地域を支える車両運行
③ オンリーワンの「All Life Best Value」 を提供するフードサービス

です。
 グローバル化が進む企業社会の現状を考えると、各業種の中で上位5社ほどしかプレゼンスを発揮できなくなる可能性があります。シダックスは規模の面でも各事業でNo1を目指しますが、戦略上重要なことはオンリーワン、つまり社会へオンリーワンの価値を提供する存在になることだと思っています。
3つの事業、つまり3つのサービス分野、業界において、それぞれオンリーワンのポジションを確立し、日本で唯一の福利厚生総合サービス企業を目指します。

●オンリーワンの自治体サービス総合アウトソーサー
 これは、グループの中で社会サービス事業を展開するシダックス大新東ヒューマンサービス(SDH)の目標です。SDHはシダックスがこれまで培ってきた「福利厚生サービス」-すなわち「人生を豊かに、健康にするサービス」の集大成・集合体と言えます。
 SDHは「社会サービス事業(企業・自治体の各種業務、観光施設、図書館等の運営等)」に始まり、「学童保育事業(放課後児童クラブの運営)」「学校給食事業」へと事業を拡大してきました。
 「学童保育」独自のコンテンツ導入で業界を牽引し、「学校給食」「図書館運営」でも業界トップグループとなるまでに成長してきました。「道の駅」の黒字化で地域経済の活性化に貢献するなど、多くのオンリーワンのサービス実装力を持つSDHですが、今後、さらに多くの社会インフラを支えられるよう、業務を拡大していきます。複数のサービス業務を実行できるフルスタック・サービススタッフなど、シダックスでしか生み出せない人財を育成し、新しいサービス、イノベーションを起こし、日本で唯一の総合アウトソーサーとして、独自のポジションを築きます。

シダックス大新東ヒューマンサービスURL▼
https://www.shidax.co.jp/corporate/group/shidax-daishinto-human-service/

●オンリーワンのハイエンド&地域を支える車両運行
 これは車両運行事業を担う大新東(DST)の目標です。2010年にグループに加わった大新東はシダックスと同じ65年の歴史ある、日本における自家用自動車運行サービスの先駆的企業です。
 役員車分野、つまりハイエンドな車両運行サービスではすでに日本のトッププランドです。また、デマンド交通という地域交通を支える車両サービスでも、日本における先駆的役割を果たしています。さらに高速路線バスなど自社所有の車両で運行する旅客事業も積極的に打って出ています。
 DSTは、礼節を重んじる「運転サービス士」という独自の概念のもと、高い専門性を持つ人財を育成し現在のポジションを得ています。この地力を十分に活用しつつ、自動運転やライドシェアなど、多様化するモビリティサービスにおいても、業界をけん引し、独自のポジションを確固たるもにしていきます。

大新東URL▼
https://www.shidax.co.jp/corporate/group/daishinto/

●オンリーワンの「All Life Best Valueを提供するフードサービス
 これはをフードサービス事業を担うシダックスコントラクトフードサービスとシダックスフードサービスの目標です。重要視すべきポイントは2つです。
 1つは私たちのフードサービスは「All Life」、つまり乳幼児から保育、学校、職場、高齢者施設、病院、さらにオイシックス・ラ・大地と強いアライアンスを結ぶことで、家庭までマーケットにできる、という事業可能性を十分活用することです。
 もう1つは、食の提供の各シーンで「最適価値(Best Value)」を提案するために、今こそ食材・調達・物流・加工・調理・提供のサプライチェーンの構造改革が必須だということです。ここに、新しいビジネスモデルを生み出すチャンスがあります。
 シダックスはかつて給食業界で初の「一元物流システム、エスロジックス」を発明し、食の安心・安全を実現するとともに、安定し効率的物流を可能にしました。そのベースを活かし、食材調達から物流、ECまでを包含した「食」のサプライチェーン改革を起こします。

シダックスコントラクトフードサービス株式会社▼
https://www.shidax.co.jp/corporate/group/shidax-contract-food-service/

●サービス産業革命を目指す
 私たちシダックスが、3つのオンリーワンを獲得して目指すものは「サービス産業革命」です。
 シダックス65年の歴史は、高い志とホスピタリティを持って、「人と人の間にあるヒューマンサービス」に従事する社員の社会的地位向上への戦いであったと言えます。
「一人ひとりの人生を健康で豊かにする」福利厚生サービスは、人と人の間に絆を育む、AIには決してできない、やりがいと誇りある仕事です。
 その反面、属人的で数値化・システム化が難しく、評価されにくい面がありました。そこにシダックスはさまざまなイノベーション、システム化を行い、「社会課題解決」の理念を通底させ、実績を積むことで、業界の健全化を実現し、社会の信用を得てきました。
 3つのオンリーワンは、ヒューマンサービスにおける高い専門性の証明です。
 少子高齢化が進む日本で、サービス産業は今後、国を支えていく産業です。その中でシダックスのポジションを確固たるものとし、サービス産業全体を進化させることが社会課題解決の実践になると信じています。

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