あらゆる環境下で、最適解を見つける給食企業。青函フェリーで働く人たちを温かい食事で支えるシダックス
東北地方と津軽海峡の海上、東北地方・青森港と北海道・函館港間の113kmを4時間で結ぶ「青函フェリー」。半世紀以上にわたり、青森と函館を結ぶ交通手段としてトラック等を運ぶ貨物・物流業務の一端を担い、。2000年からは旅客船として、1日に片道8便(往復16便)、日夜、そして1年休みなく就航しています。
2022年7月より、シダックスは当青函フェリーの船員様への食事提供業務を担っています。函館・青森それぞれの港にある厨房拠点が連携・協力をして、船上での食事提供という難問に挑んだシダックスメンバーの奮闘、創意工夫を今回はご紹介します。
■はじめから無理とは言わない。できることを考え抜く
海運業は日本の物流を支える重要な産業です。特殊な勤務形態で働く船員の皆さんにとって、船上での食事は、健康管理はもちろん、日々の楽しみとなっています。
「シダックスさんにお願いする以前は、船員の食事は4船中2船は船員による調理。残り2船は弁当業者から弁当を手配して、その際船員が船内で一部汁物の賄いを行う状況でした」。こう語るのは、フェリーの運航会社である青函フェリー株式会社 船員部 部長の坂本 良彦様。
「とはいえ、弁当ではカロリーの問題や栄養バランスが十分でないとは感じていました。もちろん、私たちで船内での調理業務も考えたのですが、厨房をどうするか、食材の調達や調理師の確保等、さまざまな壁が立ちはだかりました。そこで、北海道内で企業や病院で食事提供を行っているシダックスさんの存在を知り、調理業務を委託できないかとお声をかけた次第です」(坂本様)
食事提供の条件は、朝5時50分~22時までの間に6回程度の食事。栄養管理された献立。そしてもちろん、食事は船内で行う。人手不足が課題となっている中、食事環境を整えることが求められていました。
これまでさまざまな食事提供を行ってきたシダックスグループでも、このようなケースは経験がないため、何度も議論が重ねられました。環境要因がどうであれ、できるベストな選択を模索、そして1つの方法論に行き着きます。
「青森・函館両港にあるフェリーターミナル内に厨房があるので、そこで作った食事を車で船に運搬することを思い つきました。献立をシンプルにし、調理オペレーションを少なくすることで最小のスタッフで運営することに。さらに当社は調理と運搬に専念し、船内でも提供は船員様にお願いすることにしました」と語るのは、運営立ち上げ担当者である、シダックスコントラクトフードサービス株式会社、北海道支店の浜道 近子。栄養士である自身が献立を考えることで栄養面の問題もクリアしました。
こうして「両港で調理し、料理を船に運ぶ」というユニークなオペレーションでの食事提供が始まったのです。
■海を見て、時間を読む
では実際にどのように食事が提供されているのでしょうか。
ここは青森港のフェリーターミナルにある厨房。
この日3回目の食事である12時の提供に合わせて、準備はほぼ完了しています。あとは待つだけといったところ、窓越しで津軽海峡の海を心配そうに見つめる男性がいます。
「今日は風が少し吹いていて、船の到着は予定より遅れそうです。料理を温めるのはもう少し後にします」
そう語るのは、青森港側の調理を担う、店長の松本 直弘。
「船が到着したあとに、調理済みの料理を運ぶ、いわゆるケータリングのような提供形式になりますので、船員様にいかに最適で、美味しく召し上がっていただくタイミングでお渡しするのがカギとなります。海の状態を見て船の到着を予測するのがとても重要なのです」
船が到着しても、まず下船するのは船内の車、次に乗客の皆様。そして今度は青森港から車の乗り入れを経て、料理を運搬することができます。松本はこの下船・乗船の時間もしっかり頭に入っているんだとか。車に料理を積み、船内へ。船員様にお渡しして、代わりに使用済みの食器を引き取る。
この時間、なんと5分。スピード勝負なのです。
「この流れに慣れるまで大変でしたが、徐々に身体にしみこませて、ベストなタイミングをつかめるようになりました。最近は海の様子を見ただけで『今日は20分遅れるな』とわかるようになりました(笑)」
以前は、かつてシダックスグループが運営してきたレストランカラオケの店舗やさまざまな給食店舗で調理経験を積んできた松本さん。今や潮を読む、「港の食堂」の店長が板についています。