「社会課題解決型企業論」(志太勤一)

第5回「サービス産業の進化を促すハイパーアライアンス」

■アライアンスに「和」「利他愛」「社会課題解決」を取り入れる

 今回はシダックスの事業活動で重視している「アライアンス」についてお話します。

 アライアンスとは「同盟」と訳されます。1990年代にアメリカから輸入されたビジネス戦略の一つで、私も当時これを紹介する書籍を出版しました。

 アライアンスは企業同士が連携、提携し、新しい成果、バリューを生み出すことです。

 私が、アライアンスの有効性を感じたある事例があります。それは2003年に国分グループとの間で一元物流システム「エス・ロジックス」を作ったアライアンスです。

 現在は規制緩和などで業種・業態の垣根が低くなり、またグローバライゼーションによる企業連合や統合なども進み、アライアンスは珍しいことではなくなりましたが、当時の日本では業界・業種・業態を超えてビジネスを構築することには壁がありました。

 私はアライアンスに、日本的な「和」「利他」の思想と、「社会課題解決」のコンセプトを導入しました。

 当時の食品業界は強固な問屋制がありました。専門的である一方、ムダ・ムラ・ムリもあると見た私は研究を重ね、「安心・安全で効率的な(食材)物流システムの構築」プランを作り、業界最大手の国分株式会社へパートナーとなってもらうための提案をしました。これが実現するまでには、多くの紆余曲折がありました。業界常識・慣習を打ち破るものだったからです。

 しかし、日本の食品産業の未来を考えるという、和と利他、社会課題解決の想いを国分社長の国分勘兵衛氏は汲み取ってくれました。国分とのアライアンスによって日本給食業界初の一元物流、つまり生産者からお客様の口元まで、一気通貫して安心と安全をお届けする仕組みである「エス・ロジックス」が生まれました。「エス・ロジックス」はシ今やダックスの一つの事業会社となり、食材だけではなく企業活動に必要な様々な物資を扱っています。

 アライアンスは新しい価値を生み出します。しかし、確実なビジネス上の成果を出すまでには実証や利害調整に膨大な時間がかかり、双方の熱意・熱量が必要不可欠です。この経験で私が、最後に人を動かすのは「高い志」の共有だと確信し、この想いは、その後のシダックスの行動原理の一つとなりました。



■新しい時代のアライアンスモデル「シダックス×オイシックス・ラ・大地」

 シダックスは「社会課題解決」を理念として、フードサービス、車両運行サービス、自治体サービスのアウトソーシングという3つのコア事業を展開しています。3つのコア事業は健康、モビリティ、コミュニケティを形成していくという意味で、シダックスは「福利厚生総合サービス企業」へと進化しました。

 また一方、ITの進化やグローバリズムの潮流の中で、業種・業態の垣根が下がり、特にサービス産業は、商社や金融、IT企業など多くのプレイヤーが参入しています。

 シダックスの現状とサービス産業の構造変化を鑑み、シダックスの持続的な成長を考えて私が構想したのが「ハイパーアライアンス」です。

 現在、商社やシダックスのように、社内に様々な業種・業態があり、社外に多くのアライアンス企業を持つ企業が増えています。これを「プラットフォーム企業」と呼ぶことにします。プラットフォーム企業同士がアライアンスを結び、さらに、相互の複数の事業でシナジーを産む活動を行うことがハイパーアライアンスの定義です。

 従来のアライアンスは、異なる事業会社が「ある1点で協業し新しい価値を生む」、つまり「1+1=3」を目指すものでした。ハイパーアライアンスは、「1+1」が5にも6にもなる可能性を秘めています。 オイシックス・ラ・大地はまさにハイパーアライアンスのベストパートナーと言えます。オイシックスは業種としては「食品通販」とされますが、その部門だけで3ブランドを持ち、移動スーパーや厨房レス社食の企業などがグループにあり、「フードサービスの未来」を考えるとき、絶好のハイパーアライアンスを生み出せると確信しています。


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